IPA 地域間精神分析百科事典

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み の中で、「これらの 空想 的な内的対象 へ の 信 念 は、 非 常 に 早期 の子供 時 代の実 際の身体的体験にその 端 緒をもち、 暴 力 的でしばしば 制御 不能 な情緒的 緊張 の放 出と関連している」と 指 摘 した(1934: 321)。 P aula H eimannは、 クライ ン グ ル ー プ に 忠 実でありながらも、 欲動は対象 希 求的である という 基本 的 想 定を 逆 に身 体の 観点 から 強調 した。「 飢 えや 口唇 的欲 望 の 支配 のもとで、乳児はこれらの衝 動を満足させる対象を 何 らかの方 法 で心に 浮 か べ る。この対象、 母親 の乳 房 が現 実に 提 供される 時 、乳児はそれを 受 け 取 り、そして 空想 の中でそれを体内 化 する」 (1949: 10)。さらに最 近 では、Rober t H inshel w ood は、内的対象の原始的体験 が「全てのもの [ 生きているものも生きていないものも ] が 感 情を持ち、 意 図 を 持っているというような ア ニ ミ ズム 的 世 界 を 創 る」 (19 8 9: 75 ; 強調 は 著 者)と いう 事 実に 注 意を 向 けた。 意 図 性 を心的エネルギーに、すなわち、生の欲動と 死 の欲動の両方に 帰 すこと ができるという 考 えは クライ ン 派 の 視 点 から み ると人生の始まりから 当 てはま ると み なされている。「 愛 と 憎 し み 、 空想 、 不安 、 防衛 は ・・ 最初から 働 いてお り、対象関係と最初から 不 可 分に 結 びついている」 ( K lein 19 5 2a: 5 3)。 K lein によると、最初から、「 自我 は、 母親 の乳 房 が共にその原 型 となっている 『 良 い 』 および 『 悪 い 』 対象を 取 り入れる」(193 5 : 2 6 2)。Freud にとって対象は 常 に 本 能 が 目指 す対象であったのと 違 って、 K lein は対象との関わり ob j ec t- rela t edness を人間の 行 為 についての「 追 加 の」 第 一義的 決 定 因 子として仮定し た(19 5 2a: 5 1)。このことは、最初から内在する 目 的的な、あるいは意 図 的な 力 関係として理解された、 愛 と 憎 し み の両方に 当 てはまる。リ ビド ー的 愛着 の 場合 について、 K lein は、「 愛 や 感 謝 の 感 情は 母 からの 愛 や 世話 に 反応 して 赤 ん 坊 の 中に 直 接的かつ 自 発的に生 じ る」(193 7 : 311)と 提 唱 している。 攻撃 的衝動は、 目 的をもった生 来 的な 憎 し み の現れや、全ての 力強 い、 良 い対象 へ の 羨望 といっ た方 向 性 に沿って理解される(19 5 9: 249)。「 赤 ん 坊 が生まれて最初の 数 ヶ 月 間、 赤 ん 坊 は 母 の乳 房 に対しての み なら ず 、 母親 の身体の内 側 に対して 向 けられた サ ディスティ ッ ク な衝動を持っている」(193 5 : 2 6 2; 強調 は 著 者)。 フ ロ イディア ンの「リ ビド ー」と「 攻撃 性 」の 概念 は方 向 性 のある 感 情として とらえ 直 される。このようにして K lein は欲動論と対象関係論を 統合 しようと する。実際、生 得 的に 目 的的な現象としての欲動に関する説明は対象の 起 源 と 性 質 についての理論である。このことは体 質 因 と 環境因 の バ ラ ン ス に関する、精神

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