IPA 地域間精神分析百科事典

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展の多くの基礎的な要素を含んでいる。

Arnold Modell (1988,1989) は、治療⽬的の変化を鑑み、精神内界および関係的な⼒動的 諸⼒を発掘する伝統を拡張しているが (Modell1988)、それは「現実の多層性のコンテイナ ー」 (Modell 1989, p. 9) としての精神分析的設定の中⼼性から導かれているものである。 この観点から考えると、設定そのものが被分析者と分析家のつながりの質を含み、精神分析 的治療の⼒動的な基礎を提⽰している。Spruiell (1983) の「ゲームの規則」の重要性の強 調、Langs (1979, 1984) の「基本原則」と「枠組み」、Milner (1952) の絵画の額縁 frame の 類⽐に続き、さらに拡張し、Modell (1988) は制約 (Bleger, 1967) としての「枠組み」だけ ではなく、「別々の現実を取り囲む」 (Modell, 1988, p. 585) ものとして考え、そしてそれ は「2⼈の参加者間のコミュニケーションばかりでなく契約上の独特の約定」の制定 (同書) であり、劇場における錯覚の創造と類似した⽅法で転移の錯覚を発⽣させる。(J. McDougall, 1986も参照) 設定そのものとの調和は、広く⼒動的に考えられているところでは、現代北⽶理論や、ビ オニアンやフィールド理論のアプローチ (Goldberg, 2009; Peltz and Goldberg, 2013)、対⼈ 関係学派 (Levenson, 1987; Stern, 2009) や関係学派 (Aron, 2001; Bass, 2007 その他) に おいてさらに発展している。例えば Hoffman (2001) は、Gill に続き、Mitchell ら関係学派 のグループに加わり、儀式性と⾃発性の相互作⽤について記述した。彼は規則とその保留の 必要性に気を配った。 José Bleger は北⽶精神分析業界においては⽐較的近年にのみ読まれているが、Racker (1968) は初期から訳されており、William Alanson White Institute において Sullivan、 Thompson のもと、そしてさらに現代においては Levenson、Mitchell、Daniel Stern らのも と発展した間主観性や対⼈関係論の著作に影響を与えた。Bass(2007) のような現代の関係 性理論家たちは、分析的作業を⼆者的 bipersonal な領域に2⼈の⼈間がいる空間として形 作られるものと⾒なしている。しかし Bass は Langs とは違い、唯⼀性を強調している: 「あ るサイズが全てにフィットすることは決してない」(同書p. 12)。今‐ここは関係性の過去 に満たされており、これは Baranger 夫妻と Bleger に⼤きな類似性のある考え⽅である。設 定は、Bleger の意味において、分析過程の⼆者モデルにより調和しており、メタ理論的な関 ⼼ばかりではなく社会的、制度的な関⼼が設定のなかで展開し作動しているという考えも 含んでいる。 Bleger に類似した⽅法で、Peter Goldberg (2009) は、ビオニアンの⽤語における枠組み /設定を精神病的な不安が投影され抱えられる構造と⾒なす考え⽅を発展させた。Goldberg の考えでは、枠組みは分析家か被分析者が傷ついたもしくは精神病的な⾃⼰の側⾯を排泄

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