内容の⽬次に戻る
わりに、より現実的で、 複 雑 に認識された「全体対象」としての他者の 幸福 や生 き 残 りに 不安 の 照 準 が置かれ始める。 迫 害 は 徐 々に、 愛 の 深 まりとの 繋 がりの中 で、 後 悔 に満ちた 罪悪 感 と心 痛 に満ちた 悲 し み を生 じ させる。 憎 し み によって 失 われてきた、あるいは、 傷 つけられてきたものを 恋 い 慕 うことに 伴 って、 修復 し たい衝 迫 が現れて 来 る。 自我能力 が 拡 大し、 世 界 はより 豊 かに、そしてより現実 的に認識されるようになる。対象は 今 やより現実的で分 離 したものとして 感じ ら れるようになっており、対象に対する 万 能 的な 支配 は 減少 する。これらは 抑 うつ ポ ジショ ンの始まりである。このように、成 熟 は 喪失 と 喪 に 密 接に 繋 がっている。 そして、Roger Mone y-Ky rle (19 55 ) が 指 摘 したように、 K lein理論には、 愛 と 罪悪 感 に 基 づ く自 然 な 道 徳 性 が 組み込 まれており、それは 教 えられるというより も、発達の経 過 の中で発 見 される。 自 分から分 離 した存在として他者を認識するようになることは、他者が 結 んで いる関係 性 の理解をもたらすが、そのことはエ ディプス 的 状 況 へ の 気 づきが 不 可 避 的に 抑 うつ ポ ジショ ンを 伴 うことを意味する。Ronald B ri tt on (19 8 9, 1992) は 抑 うつ ポ ジショ ンとエ ディプス コン プレ ッ クス が発達的に 単 に同 じ 時 期 に 起 こるだけでな く 、一方の ワ ー クス ルーが 必然 的に他方の ワ ー クス ルーを 含む とい うことをより 詳 細 に 示 し 続 けている。 妄 想 分 裂ポ ジショ ンにおける、 恐 ろ しい、 迫 害 して く る「 結 合 両 親 像 」、すな わち、 父 親 の ペ ニ ス や ライ バ ルである 赤 ん 坊 たちを 含み 持つ 母親 の身体について の 空想 を K lein (1932, 19 5 2a) は仮定している。 絶 え間な く性 交 渉 をしている 状態 として 空想 されるこの原始的な バ ー ジョ ンの カ ッ プ ルは乳児の 性愛 とサ デ ィ ズム の 投影 によって、 口唇 サ ディ ズム 的、 尿 道 的、 肛門 的 特 徴 を 示 している。 しかし、 抑 うつ ポ ジショ ンにおいては、内的にも外的にも、 真 の 第 三の対象 へ の 気 づきがあり、それは 嫉妬 や 羨望 の 感 情を生 じ させはするものの、同 時 に内的 状 況 に 安 定 性 を 与 える。
「 両方の 親 との関係を同 時 に 楽 し む 乳児の 能力 は、乳児の心的生活 において重要な 特 徴 であり、 嫉妬 と 不安 によって 促進 される両 親 を 分 離 しておきたい乳児の 願望 と 葛藤 関係にある。そして、その 能力 が 得 られるかは両 親 が分 離 した 個 人だという 感覚 を乳児がもてる かにかかっている。両 親 とのこのより 統合 された関係(それは両 親
102
Made with FlippingBook - PDF hosting