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いし、 受 け 取 ってもらえていない」(1940: 1 7 )。この 状 況 は、「 非 常 に外 傷 的」 なものと 見 做 され、その 結 果 、「 悪 い対象」が形成され、同 時 に 親 密 な人間との 関係が「内的現実」 へ と 転移 することになる。したがって、 後 者は外 傷 的な 状 況 、 すなわち「 耐 えられない外的現実」(1944: 111)の 元 で生 じ 、そこでは欲求 不 満 によって、 防衛 の 目 的のために、対象を内在 化 する 結 果 となる。中心的な 防衛 機 制 は、分 裂 である。内在 化 された 悪 い対象は、 悪 い 条件 下 では「 興奮 させる」対 象と、「 拒 絶 する」対象に分 裂 され、そのどちらも 自我 による 抑圧 にさらされる 対象である。 興奮 させる対象は、 母親 の 誘惑 的で、 期 待 させるような 側面 で構成 されており、 拒 絶 する対象は 剥奪 的で、 与 えて く れない 側面 で 表 されている。 前 者は 希 望 の 宝庫 として「リ ビド ー 自我 」に 結 びつき、 後 者は 憎 悪 の機関として、 内的 妨 害 者、あるいは 反- リ ビド ー 自我 に 結 びつ く 。 結 果 として生 じ る 状態 は、「 基本 的精神内 状 況 ( t he basic endo p s y chic si t ua t ion)」として定義される ― つまり、中 核自我 は、様々な 防衛 機 制 を、( ⅰ ) リ ビド ー 自我 と 興奮 させる対象と、( ⅱ ) 反 リ ビド ー 自我 と 拒 絶 する対象に、 使 用 しているということである(194 6 : 14 7 )。中 核自我 は、 前 意識と意識、そして 無 意識の要 素 で構成されている。一方、 従 属 的 自我 は 通 常 、 無 意識である。Freud の用語を 使 用しているにも関わら ず 、これらの 線 に沿ったパー ソナ リ ティ の三つ に分かれた構造は、 古 典 的な精神分析の構造 モデ ルには、それ ほ ど対 応 して いな い 。Freudとは 異 なり、Fairbairn は、内在 化 された対象の 抑圧 に 基 づき、実際 の関係 性 の出 来 事 が、 別個 の 自己- 対象の 編 成、あるいは構造に 組織化 されると 仮定している : 中 核自我 / 理 想 的な対象、リ ビド ー 自我 / 興奮 させる対象、 反 リ ビ ド ー 自我 / 拒 絶 する対象、というように。 自我 と対象の分 離不 可 能性 は、この モ デ ルでは「最初から存在している、 元 の 単 一の 力 動的な 自我- 構造の分 裂 によっ て生 じ る、 本来 的に 力 動的な構造」という 観点 から 表 現される(194 6 : 14 8 )。さ らに、Freudの 古 典 的な意味での構造的 自我 は、 第二 局所 論における構造 化 され ていないエ ス の 派 生 物 と 見 なされているが、Fairbairn は「リ ビド ー 自我 (エ ス に相 当 する)は、 元 の 力 動的な 自我 からは分 裂 させられた 部 分だ」と 見 ている (194 6 : 14 8 )。 基本 的な理論的な原 則 の 違 いによって(方 法 論的には 類 似 してい るにも関わら ず )、精神内構造の理論は、Freud の構造 モデ ルとはか み合 わない ものとなっている。
3. Fairbairnにとって、一般的に 言 えば、「心理 学 は、 個 人とその [ 外的 ] 対象と
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