IPA 地域間精神分析百科事典

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方、 性 的発達の 病 理が精神内 部 および対人関係の発達パターンに 密 接に関連して いることを 示 した 彼 の 臨床研究 は 広く 認められており、 永 続 的な 貢 献をしている 。

Ⅲ . D. Ferenc z iと B alin t : 一 次 対象 愛 と 臨床 技 法

ブ タ ペ ス ト 学派 における対象関係論的 思 考 の 伝 統 、とりわけ Ferenc z iの 仕事 は、Michael B alin t の 貢 献を 通 して、 英国学派 の精神分析に 取 り入れた。 当 初 は、欲動と関係 性 は同 等 に重要であると 見 なされていたが、 B alin t は、Fairbairn や 独 立学派 の 伝 統 に 属 する他の人達のように、 古 典 的な欲動理論から 逸脱 してい ないにもかかわら ず 、一連の重要な関係 性 の 命 題 を 推 し 進 めている。最も 注目 す べ きことは、 次 のように 彼 が 提 案 していることである。( ⅰ )「 環境 との関係は、 最初から原始的な形で存在している」(19 68 : 6 3)ものであり、それは情緒発達の 必 要 条件 である。( ⅱ )原始的な対象関係は、 受 動的な形での対象 愛 (193 7 : 9 8 ; Ferenc z i, 1924)によって 特 徴 づけられており、「 環境 との接触を 積 極 的に求める こと」(19 68 : 13 5 )によっても 特 徴 づけられる。( ⅲ )「一 次愛 ( p rimar y lo v e)」 の経験(193 7 ; 19 68 , 12を 参照 )は対象関係の 基 礎 である。 1 . 一 次愛 の理論と、 治療 的な 媒介 方 法 としての 退行 を同 時 に活用することは、 B alin t の分析 思 考 の 基 礎 にある。 B alin t にとって(193 7 : 101)、「 [ 一 次 的な対象 -愛 ] の 痕 跡 と 名残 りは、その 後 の全ての [ 精神生活の 段階 ] で 指 し 示 すことがで きる」。一 次愛 の経験は、 胎 児 期 における、 環境 へ の 強 い 備給 を 伴 っているリ ビ ド ーの 状 況 を、 再 現しようとする乳児の 試 み という 観点 から説明される。 B alin t によれば、 後 者は、「おそら く まだ 未 分 化 であり、一方ではまだ対象は存在して おら ず 、その一方で、それは ほ とんど構造を持た ず 、 特 に 個 人に対する明 確 な 境 界 を持っていない。 環境 と 個 人は互いに 浸透 し、 [ 調 和 のとれた 混合 の ] 状態 で、 一緒に存在している」(19 68 : 66 )。 B alin t は、出生は「 平衡 」 状態 を中 断 し、それによって人間と 環境 の分 離 を 促 進 する、あるいは 前進 させると主 張 する。Ran k (1924)からの 直 接的な 反映 として、 出生外 傷 が、対象 - 関係を 引 き 起 こす。「 自我 を 含 んでいる対象が、 物質 のその 混 合 体から、そして、 無 限 の 広 がりの 調 和 が 崩 れるとこ ろ から現れ始める」(19 68 : 67 )。子 宮 外の生活の最 早期 は、 ナ ル シシスティ ッ ク な 状態 だと 見 なされるので

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