IPA 地域間精神分析百科事典

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Winnico tt (19 5 4; 2 8 1)の精神分析の 基本 的な仮定であり、「 健康 とは … 、精神の 進化 的発 展 に関する連 続性 を意味しており、 健康 とは 個 人の 年 齢 に 応じ た情緒発 達の成 熟 である」という 考 えである。したがって Winnico tt は、関連する一連の 存在論的 運 動(on t ological mo v emen t s)を 非 常 に 多く の発達 上 の成 果 として説明 している。( ⅰ )「主 観 的に 思 い 描 かれた対象との関係 性 から、 客 観 的に認識され た対象との関係 性へ 」(19 6 0: 4 5 )、( ⅱ ) 絶 対的 依 存から、相対的 依 存を経て、 環 境 が内在 化 されたことを 含 意する 自立へ (19 6 3b)、( ⅲ )パー ソナ リ ティ の 早期 の 未統合 の 状態 から、エ ディプス 構造によって 特 徴 づけられる 組織化 された 個 人の パー ソナ リ ティへ と。 未 熟 な乳児の 遺伝 によって 伝 わった 能力 、または原初的 創 造 性 は「 単 一の 状態 (uni t s t a t us)」を達成する ― すなわち、 母親 が様々な 段階 で、様々な方 法 で乳 児の関係 性 の ニ ー ズ を満たすことを 条件 として、乳児は対人関係を 築 く ことがで きる全体的な人間になる。乳児と 母親 の原始的な関係 性 は「 本能 的に 派 生したも のとも、 本能 的な経験から生 じ る対象関係」とも 見 なされない(19 5 2: 9 8 )。 む し ろ 、 母親 が 提 供するものは、 本能 的な ニ ー ズ の満足とは 独 立 したものとして 考 え られている。それは、欲動を経験できる 見込み や、乳児が 本能 を 使 用できるよう になる 見込み を 与 えるのは、 環境 である。「 赤 ん 坊 を存在し始めさせるのは 本能 満足ではない … 自己 による 本能 の 使 用より 先 に 確立 され ね ばならないのは、 自己 である」(19 67 : 11 6 )。 Winnico tt は、 可 能性 が 錯 覚 として実現される最初の 万 能感 の経験を仮定して いる。 母親 の 適 応 が ほ ど 良 ければ、それは「 彼 女 の乳 房 が乳児の一 部 であり … 、 乳児 自 身の 創 造する 能力 に一 致 する外的現実があり … 、乳 房 は乳児の 愛 する 能力 から、あるいは( 言 わば) 必 要 性 に 迫 られて、 何 度 も 何 度 も 創 造される … 、という 錯 覚 の機 会 」を 提 供する(19 5 1: 12 - 4)。 錯 覚 において具現 化 された一 致 、あるい は重なりが 起 こることで(Milner 19 5 2; 19 77 を 参照 )、乳児が 創 造するものが (「 客 観 的に認識された対象」というより「主 観 的対象」として)、 本当 に存在す るという 感覚 が、存在することの 継 続 という 極 めて重要なものを 維 持させ、さら には「 移 行 対象」と「 移 行 現象」が 属 する経験 領 域を構成する。

錯 覚 は、その ゆ っ く りとした 衰 退 も 含む 情緒的 過程 、すなわち、 錯 覚- 脱錯 覚 という一つのまとまった 過程 の一 部 である。乳児の最初の存在 希 求 へ の 母親 の 高

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