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う 概念 に触発されて、 早期 の乳児と 母親 の相互作用において、「 母親 は、対象と してよりも 過程 として、より重要 性 を持ち、同定されやすい」ことを 指 し 示 して いる、「 変 形 性 対象( t rans f oma t ional ob j ec t ) 」という用語を導入した。 B ollas(19 87 、 p . 2 8 )は、 母親 が「全体的な対象として 幼 児にとって人間 化 され る」 前 は、「 母親 は 変 形の 領 域あるいは 源 として機 能 している」と主 張 した。し たがって、「 母親 は、他者としてまだ 十 分に同定 可 能 ではないが、 変 形の 過程 と して経験される。そして、この 早期 の存在の 特 徴 は、大人としての生活の中で、 対象が 変 形の シ ニ フィア ンとしての機 能 のために求められる 時 、対象 希 求の 特 定 の形式において生き 続 けている。」(19 87 、 p . 14) B ollas は、とりわけ、「対象の 統合性 」と 彼 が呼 ぶ ものに関して、対象関係の 精神分析的理解を 拡 大した。 B ollas(1992, p . 4; 強調 は原 著 者)は 次 のように 書いている。「かなり 驚 きなのであるが、対象関係論では、 個 人の 投影 のコン テ イナ ーとして 見 なされている対象のもつ際 立 った構造に ほ とんど 思 考 が 向 けら れていない。 確 かに対象は 私 たちを持ちこたえて く れる。しかし、 十 分 皮 肉 なこ とに、まさに対象が 私 たちの 投影 を 保 持して く れる からこそ 、一つ一つの対象の 構造的 特 徴 がさらにより重要になって く るのである。と 言 うのも、 再 経験の際に、 自 身の 自 然 な 統合性 に 従 って 私 たちを 処 理して く れるコン テイナ ーに、 私 たちは、 私 たち 自 身をも 預 けるのだから。」
I V . B b. Š ebe k : 全体主義的対象
Michael Š ebe k (199 6 ; 199 8 )により定義された(内的そして外的)「全体主義 的対象」という 概念 は チ ェ コ ス ロ バ キ ア の全体主義的共 産 主義 政 権 の 下 で 行 わ れていた分析作 業 に 基 づいている。この 概念 は外的な全体主義的 権 力 を心的内 界 の全体主義的な 力 動とを 結 びつけるのに 役 立 つ。 後 者は 部 分的に内在 化 され た 蒼 古 的な 無 意識的 世 界 の一 部 として み なされている。全体主義 政 権 と 圧制 者 が人 類 の歴史の中に存在する 限 り、全体主義的対象の 世 代間 伝 達が 起 きやすい 状態 が 維 持されることを Š ebe k は 記 している。 Š ebe k (199 8 , p .201 7 )によると、 これら対象の「 万 能 」「全 知 」そして「全 能 」という 性質 は原始的理 想化 の 過 程 — これにはトー テ ム 崇拝 、さま ざ まな神、 統 治 者、 独 裁 者、 カ リ ス マ 性 のある
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