IPA 地域間精神分析百科事典

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p .2 7 2)。

Mahler にとって、発達がうま く いっている 指 標 はエ ディプス の解 決 がうま く い く ことに 続く性 器 統 制 の 確立 ではな く 、 む し ろ 共生的な 母 − 子関係に 埋 め 込 ま れているとこ ろ から、 予 測 可 能 で現実的に 知 覚 された他者の 世 界 の中で 安 定した 個 の アイデ ン ティティ の達成に 至 るまでの発達的な 変 化 である。 この 過程 は子 供の「分 離 − 個 体 化 」または「心理 学 的 誕 生」と呼ばれた。分 離 と 個 体 化 は相 補 的だが 異 なる発達 過程 である。分 離 は子供が 母親 との共生的な 融 合状態 から出て く るものとして定義されている。つまり 個 体 化 は、子供が 自 身の 個 性 を 引 き 受 け るとこ ろへ つながる、それらの達成から構成されている(Mahler e t al, 19 75 , p .4)。 Mahler の理論は、成長と発達がどのように 進む かに重 点 を置いた 自己 と対象 の関係に 基 づ く ものであったが、 古 典 的な欲動論から生まれたものであった。子 供は、Mahler の 視 点 からは、 葛藤 する欲動欲求にはあまり 困 っておら ず 、 む し ろ自立 し、 自 律 的な存在になりたいという 願 いと同 程度 に、 脱 してきた共生的な 融 合状態 に 戻 ろ うとする 強力 な衝動の間で、持 続 して 折 り 合 いをつけていかなけ ればならない存在だった。 特 定のサ ブ フ ェ ー ズ のタ イ ミ ン グ の 特 徴 に関して 次第 に発 展 が み られた。最初 に Mahler の理論では「 正常 な 自 閉 」から共生の 時 期 、その 後 分 離 個 体 化 の 4 つ の連 続 して 展開 するサ ブ フ ェ ー ズ を 通じ て子供は発達すると 推測 された(Mahler, P ine and B ergman, 19 75 ). 後 にMahlerは一 次 的 自己愛 と 刺激 障 壁 に 基 づいた 新 生児の最初の 2 ヶ 月 を 正 常 な 自 閉 期 とする 考 えを、重要なことに、 取 り 下 げ た。 誕 生から子供たちは 環境 とその中の対象を認識している 兆候 を 示 しており、 刺激 障 壁 は B lum ( B lum, 2004b)が Mahler に 提示 した用語である「 刺激フィ ルター」だと 気 づいたからだ った。 2 ヶ 月 目— 共生 期 — から、乳児は対象についておそら く 漠 然 としか認識しておら ず 、「 妄 想 的 − 身体的 − 心理的」 融 合状態 の中にいる(Mahler e t al, 19 75 , p .4 5 )。 これは 自己 と他者の間の 境 界 がない心的内 界 の文脈で生 じ た 陽 性 の関係 性 の 状 態 と 考 えられている(Fonag y , 2001)。この 時 期 の間情緒の ミ ラ ーリン グ は 決 定的

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