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れる」(Mi t re, 200 8 , pp . 6 )。 資 源 をもたない人々に 依 存しなければならない という 事 実によって、 無防備 な 立場 である 患 者はいかなる外 傷 的な 状 況 に対し てもさらされたままになる。 G arc í a B adaracco は、精神を重 く 病 んだ人の心的 装 置のなかでは、主人と 奴 隷 という 病 的な共生関係が、 役割 が交 換可 能 でありながら、お互いに 不 可欠 で あるというような形で形成されうると 見 ていた。その共生関係のどちらの メ ン バ ーも、 真 の 個 性化 や 自 律 性 に 到 達することができ ず 、この 狂 わせる対象 maddening ob j ec tへ の 永 続 的な 固 着 の中にある。精神を 病 んだ 患 者は、 二 人の 関係に 囚 われている。この 不 快 にさせ 狂 わせる 筋 書きは、 無防備 で 未 熟 な 自我 に構造 化 する機 能 を 提 供する 第 三者だけが解体することができる。 病 人や 狂 人と み なされ、 見 られることは、 潜 在的に 不 快 にさせることであ る。しかし、どんなに 病 んでいても、その人の中には 常 に 健 全な仮 想性 があ る。人は、 真 の 自己 が他者によって 救 助 されて 必 要 条件 がととのっているとき だけ、 病 気 にではな く健康 に「 み なされている」と 感じ る 程度 には、存在から 徐 々に 自己 を 脱 同一 化 することができる( 病 的とは 親 によって「 見 られた」 姿 である)。その 時 初めて、 健 全な相互 依 存関係の構 築 を 回避 するための 防衛 と して 症 状 を 維 持するという 万 能感 を放 棄 して、 別 の人や他人を 頼 りにすること ができるようになるのである。 セ ラ ピ ス トが、 病因 的で 病 理的な同一 性 を 超 えて、つまり ウ ィ ニ コットが 偽 りの 自己 と 表 現するような同一 性 や 性格 によって 隠 され 抑制 されている、 未 発 達の 潜 在的な 健康 な仮 想性 を 知 覚 することができるのは、この 第 三者の機 能 に おいてである。「 赤 ん 坊 や子どもが 環境 に 適 応 すると同 時 に、 真 の 自己 、つま り衝動の 源 を 保護 し、 隠 蔽 するように、 母親 の養育機 能 を 未 熟 な者が 担 当 する 防衛 的 組織 」(Winnico tt 19 8 9 , pp .4 7 )。このように 隠 された 潜 在的な仮 想性 は、 自我 の発達の 過程 で解 離 し、 停止 した 自我 の 側面 に対 応 する。 隠 された 本 当 の 自 分を「生」かしてお く ために、 性格 が作り 上 げ られる。
他者から 押 しつけられる精神 病 質 的 行 為 から 自 らを 守 るための 自我 資 源 の発 達を 促 す、この 痛 み を 和 ら げ 構造 化 する存在は、Freud が「 終 わりのある分析
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