IPA 地域間精神分析百科事典

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と 終 わりのない分析」(Freud 193 7 )の中で説明した 自我 の 変 化 の モデ ルに 従 っている。

そのとき現れるのが、 B alin t が「 新 しい始まり」と呼んだものである。 「 ...(a) 何 か 『 原始的なもの」、つまり発達の 欠損 が生 じ る 以前 の 時 点 に 回 帰 すること、これは 退行 といえるだ ろ う。 (b) 同 時 に、 新 しい、よりしっ く り く るあり方を発 見 すること、これは 前進 である。」( B alin t , 19 68 , pp .1 5 9)。 G arc í a B adaraccoの 視 点 から 考 えて み ると、この 瞬 間は、精神 ・感 情の 再 発達 の 治療 過程 で 消 耗 した、 病 んでいるが 欠 く ことのできない存在の 脱 同一 化 と関 連している。「 患 者が 以前 の 自 分には 戻 れないと 感じ るような、 狂 わせる対象 maddening ob j ec t からの 脱 同一 化 の 時 期 がある。かつて 彼 が同一 化 していた 病 因 的な 性格 は 曖昧 になり、一連の 変 容 が精神 装 置の中で生 じ ている。このよう な 新 しい構成は 非 常 に 新 しいものであるが、まだ一 貫 した 像 を現していな い。」( G arc í a B adaracco, 19 8 0、 p .2 7 1)しかし、 G arc í a B adaracco は、 狂 わせる存在との内的な同一 性 の 喪失 は、長 く 段階 的な 労 苦 の 多 い 過程 であると 警告 するが、それはそのような内なる 特 定の存在との同一 性 の 喪失 を、 患 者は そもそもの 不調 のきっかけであった 虚 無 感 が 死 の 感覚 と 混 同してしまうからか もしれないからである。

V I. Ah. Will y B aranger : 「 半 分 死 んでいて 半 分生きている対象 H al f Dead H al f- Ali v e O b j ec t 」

Will y B aranger(19 6 1 - 19 6 2)は、あら ゆ る 喪 の 過程 や 抑 うつ 状態 に生 じ るよう に 見 えるがそれに 限 定されない、対象が 半 分 死 んでいて 半 分生きているように 経験される、対象の 特 殊 な構造について 述べ た。 臨床 経験と 空想 の 創 造 物 (神 話 、 伝 説、 小 説など)から、こういった構造は実 に 多 様で、あるものは 迫 害 的で、あるものは 傷 つき、 抑 うつ的であることが 示 さ れる。 臨床 経験と 空想 の 創 造 物 (神 話 、 伝 説、 小 説など)から、こういった構造 は実に 多 様で、あるものは 迫 害 的で、あるものは 傷 つき、 抑 うつ的であることが 示 される。い く つかの ケ ー ス では、 抑 うつの 起 源 は、 無 意識の 世 界 で重要な位置 を 占 める 半 分 死 んで 半 分生きている対象に的を 絞 っているように 見 える。それは

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