IPA 地域間精神分析百科事典

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付 随 する対象における機 能 、相対 性 、 制御 の交 換可 能性 は、 J orge Momの 貢 献の 最も重要な 部 分の ひ とつである。ここでは、 不安 は 症 状 の 起 源 というだけではな く 、一 次 的な 症 状 でもある。 Mom(19 6 1 - 19 6 2)はFreudの 不安 の 第二 理論である、 不安 は 抑圧 に 先行 し、 自我 に 不 快 の 信 号 を 示 すという理論を 拡 張 した。Momによる 拡 張 版 では、 不安 は主体の心的経 済 における中心機 能 として現れる。主体、「 恐怖 症 の対象」、 「付 随 する対象」は、 状 況 的文脈に 応じ てその機 能 を交代させることができ る。Momは 過程 の 可 塑 性 と 可 動 性 の原 因 となる「 恐怖 症 的 状 況 」と「付 随 する 状 況 」について語った。しかし 可 動 性 は、 恐怖 症患 者にとって 混 乱 と、 危険 な 未 分 化状 況 を生 じ させもするため、 患 者は 厳 重な 制御 で 回避 しようとする。こ のように、Mom にとって 恐怖 症 は、 恐怖 症 に付 随 する 状 況 全体の相互作用とな る : 恐怖 症 を構造 化 する主体は 当 初、 秩 序を 確立 するための対象を求める。対 象が 失 われると、 境 界 機 能 の 喪失 が生 じ る。 その 結 果 、「 恐怖 症 を生 じ る対象」が分 化 機 能 を 果 たすようになり、 恐怖 症 の対象、付 随 する対象、そして主体の 区別 がつ く ようになる。 恐 ろ しいことか もしれないが、この分 化 は、発 狂 しそうに 感じ ている 恐怖 症 の人の 特 徴 である 恐 ろ し く 破 局 的で 限度 のない 未 分 化 の解 決 策 として求められる。 恐怖 症 はその ような 破 局 を 防ぎ 、 不 在の解 消 に 役 立 ち、 不 在であるものの代わりに定 住 し、 その存在によって 不 在を 隠 すのである。 恐怖 症 の対象は、付 随 する 状 況 を作り 出すために 必 要なのである。付 随 する 不安 は、「 不安 ではないことの 信 号 とし ての 不安 」というさらに大きな 不安 から 恐怖 症 の 個 人を 守 る。 恐怖 症患 者は 恐怖 症 の対象を 避 けるのではない。それを求めている。これと は対 照 的に、「 恐怖 症 的 状 況 」は、 望 んだ関係が 失 われることによって 表 現さ れる。 恐怖 症患 者にとって、 不安 は 不 可欠 であり、構造 化 するものであり、 厳 格 に 維 持されるものである。それは 恐怖 症患 者の生活の 本質 であり、 彼 の 真 の 「付 随 する対象」である。対象が交 換可 能 であるという 記述 は、それらが互い に 異 なっていないという意味ではない。交 換可 能性 はそれらの機 能 の レ ベ ルで 生 じ る。 恐怖 症 は、 制 限 、 切断 、 去 勢 の 順 に 展開 する。 恐怖 症 の 真 の 随伴 者は 不安 であり、 不安 が対象なのである

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