IPA 地域間精神分析百科事典

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(1958, Bion 1984 に収録 ) 、「連結することへの攻撃」 (1959) においてであった。 Melanie Klein の投影同一化に関する理論 (Klein, 1946) の範囲内で乳房に対する赤ん坊の関係に言 及しつつ、彼は、新生児が体験する崩壊や死の不安に向き合うには、母親/乳房と赤ん坊 の間の適合がいかに重要であるかを強調する。情緒に向き合いそれらを修正して情緒的に 知ることを可能にするとなると、コンテイナーである乳房が申し分なく存在していること が鍵となる。こうして、自我の原始的な防衛という投影同一化の概念についての Bion の 定式化は、コンテイナー‐コンテインドモデルに暗に含まれる、標準的な発達の現実的な 投影同一化という叙述へと進展していく。

Ⅲ.コンテイナー‐コンテインド(コンテインメント): Bion における概念の進展

1959 年の論文「連結することへの攻撃」 (Bion, 1959) において、 Bion は、投影同一化を 頼りに自身のパーソナリティの諸部分を分析家へと排泄する、ある精神病患者との体験を 叙述した。患者の観点からすると、もしもそうした諸部分が十分に長く分析家のなかに留 まることを許されるなら、それらは分析家の心による修正を受け、そののちに安全に再取 り入れされうる。自らの投影物を分析家があまりにも素早く排泄してしまい、つまりは諸 感情が修正されなかったと患者に感じられたとき、いかにして患者がそれらを、更に死に 物狂いで暴力的に分析家へと(再)投影しようとすることによって反応したかということ を、 Bion は叙述している。この臨床過程を、 Bion は、患者のある体験 ― 乳児の投影物を 取り入れることに耐えられずに乳児から投影された恐怖をコンテインしなかった母親との 体験 ― と結びつける。 Bion は次のように示唆している。「理解ある母親は、この赤ん坊が 投影同一化によって対処しようと懸命になっていた恐怖という感情を体験することがで き、そしてそれでもなお、バランスのとれた見地を保つことができるのである」 (Bion, 1959, p. 103-104) 。 1962 年には、著書『経験から学ぶこと』および論文「考えることに関する理論」におい て、 Bion (1962, a, b) はこうした考えをさらに発展させ、母親が乳児から投影される強い 恐怖を取り入れてコンテインするときの母親の受容的な心の状態を、もの想い reverie と 述べた。母親のもの想いというアイディアを投影同一化のアイディアに加えることによっ て、 Bion は、環境がいかにして原初の関係を通して精神内的発達に影響を及ぼすのかとい うことを含めている。もの想いとは、子どもによって投影されるものに母親が無意識的に 同一化して応じる、その受容的な精神状態を指す。母親のもの想いを通して、子どもが何 を伝達しようとしているのかについての新たな理解を、母親は創り出す。母親は、 Bion が

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