IPA 地域間精神分析百科事典

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ている。分析家は「患者の 要 求 を 満⾜ させたり、患者がえてして分析家に強いる 役割 を 果 た したりすることを、 原則 として 拒否 す べき である」(19 7 3, p.2)。

F reud は、1911 年 から1915 年 にかけて 執筆 した 技 法 に関する 諸 論⽂の中で、 治療へ の 熱 意が 孕 む 危険 に つ いて論 じ 、分析家は 外 科 医 のよ う に 振 る 舞 う とい う 有 名 な 描写 を⾏った。 後 者の ⽐ 喩 は、⽂ 字 通 りに 受 け 取 られるならば、( 沈 黙 する分析家とい う 考えにおけるよ う に) 誤 解や 批 判 を 免 れなかった。分析家は「 正 しい」解釈を 与 える 必要 がある だ けでなく、 重要 なこと だ が、分析の プ ロ セス が 進 展していくよ う な関 係 を患者に 提供 する 必要 もある とい う 事実 を、Rycro f t (1985)は強 調 した。Aron (2001)が強 調 するのは、分析における相互 交 流 は ⾮対 称 的 だ とい う ことである。 ⾮対 称 性 の⼀ つ は、双⽅の参 与 者ともに 設 定 / 枠 組み を 維 持 しよ う とする 試 み に 失敗 するであろ う ものの、分析することによって 枠 組み を 回復 するのは分析家の 責任 である、とい う ことである。これは 倫 理的な 問題 でもあり、そしてメ タ ⼼ 理 学 的な 問題 でもあるよ う で、分析家の義 務 と 機能 に関 係 する。中 ⽴性 と 禁 欲 もまた、 ⾃⾝ の患者や 仕事 に 対 する分析家の 姿 勢 とい う 倫 理的な次 元 の 基本 である。これらの 能⼒ を 真 に 内 在化するのでなければ、分析家の ⾃⼰ 愛 的な ニ ー ド が患者の 脆 弱 性 を 搾 取 するこ とになるかもしれない。 倫 理違 反 の 研究 ( G abbard と Celenza, 2003)によって、分析的 禁 欲 の 重要性 と意味、そして分析家が ⾃⾝ の逆転移を モ ニ ターすることの 継 続 的な 必要性 に 注 意が 向 けられた。 通 常 内 的 設 定 は分析家に ⾔及 しているの だ が、しかし、 患者 に つ いては 内 的 設 定が 検討 さ れないとする理 由 もまた存在しない。分析状況の 特異 性 は、無意識的な 情 動、 葛藤 、 空想 を ⾃由 に表現することを患者が 厭 わ ず 、そして分析家にそれを 把握 する 応答性 があることに 存する。患者が ⾃⾝ の無意識的 空想 を表現で き るためには 彼 はある 特 定の精神状 態 を 必要 とするの だ が、 ⾃由 連 想 に 応じ よ う と 努 めるとい う 約束 を 受 け ⼊ れるために、その精神状 態 を 達成 することは 容 易 ではない。 フ ロイトによるとこの 基本 規 則 は、患者が「いかなる意識 的な 内 省 をも 控 え、 静 かな集中状 態 で、おの ず と(意 図 せ ず ) ⾃⾝ に⽣ じ る考えを 辿 ること に ― [ … ] たとえそれらの考えが 不 愉 快 で、あまりに ⾺⿅ げていて、あまりに 取 るに ⾜ らなか ったり無関 係 であったりするとしても ―⾝ を 任 せ」なければならない、とい う ことから 成 っ ている ( F reud, 192 4 , p. 195)。 W innicott の ホ ール デ ィングや 促進 的 環 境 とい う 概念を 継 いで、 ほ かの 多 くの分析家が 「分析的 態度 」に関する思 索 を 探索 し発展させて き た ( W innicott, 1965, K lauber, 1981, Bollas, 198 7 , Parsons, 201 4 )の だ が、それは、分析家が ⾃⾝ を患者によって使⽤される 対 象 として 提供 するよ う な 態度 である。これにより、転移と逆転移や分析家の 情 動的 応答 ( K ing, 19 7 8)を含めた分析 過 程 の理解に関する 領 域が広がっていった。J. Sandler (19 7 6)は分析家 の 役割応答性 とい う 概念を 記 述 したが、これは、患者に 属 する 内 的 対 象に無意識的に同⼀化

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