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19 38 年、最期を 迎 える 直前 にFreudは 分裂や否認、理想化 といった原始的な 防衛機制を 明 らかにした。特に、原始的防衛の 暴 ⼒性と 以 後に 獲得 する防衛との 相違 を ⼆ 次 抑 圧に 関係 させて 強調 した。倒 錯 との 関 連でこれらの防衛を 研究 す ることによって、Freud は倒 錯 の 構造 ではなく 病 理に 焦点 を 当 てた。 Melanie Klein の投影同⼀化という概念は上 記 のFreudの論 考 から 端 を 発 した と 考 えられるであろう。しかしながら 追記 す べ きは、Klein が―Freud が 記述 し たような⾃ 我 の世界の み ならず―対象の世界に お ける 分裂 の 役割 を 発⾒ し、そ れによって部分対象 関係 と同⼀化という 豊穣 かつ 複雑 な 宇宙 が⽣ み出 されたこ とである。 投影同⼀化は様 々 な⼈に投影される― 転移 される― ⼼ 的 対象を扱うが、 当然 のことながら最初のそれは⼈⽣の始まりに お ける⺟親、あるいは 代 理⺟であり、 最初は部分対象― 「 乳 房」 ―として、それから 全 体対象―⺟親という⼈ 物 ―とし て、である。 1946年にMelanie Kleinは、 投影同⼀化 は望まれない感情や対象、⾃⼰の部 分を乳児が⾃分⾃⾝から 取 り 除 く 精神内 界の ⼿段 であり [ 無意識的 ] 空想の中で ⺟親を⽀配する機制であると 考 えた。また Klein はこれらの投影された 諸側⾯ が 良 くも 悪 くもあり 得 ることを 明確 にした。投影同⼀化は無意識的な 羨 望に 刺激 されて 羨 望の対象を 破壊 するものとして機能する―空想の中であることに 今 ⼀ 度⾔及 して お くが―という 考 えを彼⼥は 提唱 した。乳児の投影は 悪 いものを排 出 し 良 いものを 保 持すると 考 えたように、投影同⼀化と 取 り⼊れ同⼀化は 密接 に 関 連していることを Klein は 指摘 した。 病 理的に投影同⼀化を ⽤ いることによって、主体は、Freud (191 5 )によって 描 写 された⻑期に 渡 る苦痛な 喪 の 過程 を 回避 することができる ⾮ 現実的な空想に 留 まり、 結果 として― クラ イン 派 の理論的 枠組み では― 妄 想分裂 ポジ ションか ら 抑 うつ ポジ ションへの 移⾏ が 阻害 されることを彼⼥は 観察 した。Klein は投影 同⼀化が無意識的空想であると 考 えた― 「 投影 」 の部分と 「 同⼀化 」 の部分の 両 者とも無意識である。投影の 受 け ⼿ である対象ないし部分対象は現 存 している 必 要はなく、投影を認識している 必 要も 全 くない。この機能様式―分裂 / 否認 / 理想化 / 投影同⼀化―は 外 的現実と ⼼ 的現実との境界を 消滅 させ、それによっ て主体は 外 的現実の⼈あるいは 内 的対象の 全 体ないし⼀部に対する⼒を―空想 の中で― 獲得 するという 事 実をKleinは 強調 した。投影同⼀化という無意識的空 想は 強 ⼒な 過程 である。それは投影する 側 の⼈の ⼼ に実 質 的影 響 を 常 に 及ぼ す であろう(その⼈は⾃分⾃⾝の⼀部が 失 われ、 例 え ば 、 確信 と 正 義感を 強 く 抱 く
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