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「良 い 」 対象と 「悪 い 」 対象の 状 態 は投影同⼀化の 病 理によっても 変 わるであ ろう。⾃ 我 を 悪 い対象から 保 護 するた め に、 良 い対象を⾃ 我 の 内 部に 保 持し、 悪 い対象は⾃ 我 の 外 に投影すること だ けではなく、その 逆 や 補⾜ 的 状況 もまた ⾮ 常 に⼀ 般 的であることに Melanie Klein は 既 に 気 づ いていた。それは、⾃分⾃⾝ の ⼼ ないし⾝体の 内 部が 悪 く 危険 と体験された 際 に― 例 え ばメラ ンコリーのよ うに―、 患 者は 良 い対象を⾃⾝の 攻撃 的な 悪 い部分から 保 護 するた め に 良 い対 象と⾃ 我 の 良 い部分を 外 的対象へと投影することである。 Frances T ustin (199 2 )は、⺟ ⼦ 間に 全 く空間がないように 慢 性的に⺟親に 「張 り 付 く 」 ⾃ 閉症 児を 記述 するた め に 「 粘 着 等 式 adhesi v e e q uation 」 という ⽤ 語 の 使 ⽤ を 提 案 した。 ⼼ 的空間への 気 付 きがなけれ ば 真 の対象 関係 は 存在 し 得 ず、 関係 が 存在 しなけれ ば 同⼀化という⾃⼰ 構 築 過程 は 進 ⾏ し 得 ないという 点 を T ustin は 明確 に 強調 して ⽰ した。 粘 着 等 式ないし 附 着 同⼀化は ⾃⼰ お よ び 対象 の感 覚 ではなく 存在 の感 覚 を 確 ⽴ する 役割 を 果 たすと ⾔ えるであろう。 ⾃⼰の 内 部の空間が 発達 可能となるた め には 「 ⽪膚 対象 」 が 精神発達 に お いて ⾮常 に 早 期に体 内 化されなけれ ば ならず、それによって 投影同⼀化 の機制( 解 毒 と意 味 を 探 し 求 め る ⾚ん坊 と⺟親との間の ⾮⾔ 語 的コミュニケーションの最初 期の⽅ 法 )が 阻害 されることなく機能できるようになると 思 われる。実 際 、Mauro Mancia (19 8 1)の 研究 は ⼼ 的 ⽪膚 が ⼦宮 内 でこのように 早 期に 発達 する可能が あるという ⾒解 を⽀持している。 H er b ert Rosen f eld (19 7 1 / 19 88 )は投影同⼀化について 広範 囲 にわたって 記述 して お り、 今 や 古 典 になっている彼の定義は 全 ⽂を 引 ⽤ するに 値 する。 「 『 投影同⼀化 』 はまず 早 期の⾃ 我 の分裂 過程 に 関係 する。そこでは⾃⼰の 良 い部分か 悪 い部分が⾃ 我 から分裂排 除 され、次の 段 階 として 愛 か 憎 し み を もって 外 的対象へと投影されることで、投影された⾃⼰の部分は 外 的対象と 融 合 し同⼀化する。このような 過程 に 関 連する 重 要な 妄 想的 不 安 がある。⾃ ⼰の 攻撃 的な部分で 満 たされた対象が 迫 害 的になり、それらの対象⾃⾝を、 あるいはそれらの対象が⼀ 度 はコンテインした⾃⼰の 悪 い部分を⾃ 我 の中 へと 再 び 押 し 付 けることによって 報復 するという 脅威 として 患 者に体験さ れる。 」 (19 88 ; p . 11 7 ) B ionの 着 想に ⾮常 に影 響 を 受 けて、 B etty Joseph は 精神 分 析 の 設 定に お いて 投影同⼀化の性 質 や機能に 我々 の 注 意を向けることでさらなる 貢献 をした。
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