IPA 地域間精神分析百科事典

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恐 れる⺟親は、投影されたものを 返 すことができないかもしれない。 W innicott (19 7 1, p . 114)はこれをうつ 状 態 の⺟親の 「 ミ ラ ーリング mirroring 」 の 失 敗 と 表 現している。Mitrani (199 3 )は、 場 合 によっては⺟親の ブ ラ ッ ク ホ ー ル 的な 抑 う つが 優勢 になることがあると 提⾔ している。そのような⺟親の 「 ⽣ 気 のなさ deadness 」 は乳児のす べ ての 活 ⼒を 吸 い 取 り、苦痛に 満ち ているが 活発 な乳児の 投影を、 反 響 させることも 反 動、 反射 させることもせずに 吸 い 込 んだ り 飲 み込 ん だ りして乳児に 枯渇 と空 虚 の 経 験をもたらすかもしれない。 吸 い 取 る⺟親 a b sor b ent mother と彼⼥が 呼 ぶ そのような⺟親のこの体験が、 萌芽 しつつある ⾃⼰を 保 持しようとする乳児 側 の 試 み に お いて、⺟親とのコミュニケーション ⼿段 としての 正常 な投影同⼀化を 減弱 させる 結果 になり 得 ると彼⼥は 観察 して いる。さらに、もともと投影されていたものよりもさらに 恐 ろしく 考 えられない 要素を⺟親は乳児に 照 らし 返 し、その 結果 、乳児は ⼗ 分にコンテインする⺟親を 利 ⽤ する能⼒を 失 ってしまうかもしれない。この 場 合 、 正常 な投影と 取 り⼊れの 活 動は 抑 制され、 知 的 活 動のた め の 装 置 の 発達 は 阻害 される。 上 記 のす べ ての 場 合 に お いて、 不⼗ 分なコンテイニングの体験に 関 わる 頑迷 かつ 吸 い 取 る、 考 えられない対象は、 修 正 不 可能な ⼤ 規模 な投影、⺟体の 聖 域へ の 貪 欲 な 探 索 、あるいは投影や 取 り⼊れの機能の 抑 制や 萎縮 のいずれかを 引 き 起 こす可能性がある。 結果 として、 考 える thin k ingた め のこころ、あるいは 思 考 thoughts そのものが 発達 し 損 なう可能性がある。 Sulli v anと L e v ensonの 研究 に ⼤ きな影 響 を 受 けた対⼈ 関係 論の分 析 家 である D onnel B. Stern は、分 析 的 交流 には分 析 家 と 患 者の意識的な 側⾯ と無意識的な 側⾯ の 両 ⽅の 絶 え間ない 相 互作 ⽤ が 伴 うと 指摘 している。このようなプロ セ ス に お いて投影同⼀化はその 交流 の中に 組み込 まれて お り、そのプロ セ スは双⽅ 向的で 流 動的である。彼の モデ ル では、 患 者と分 析 家 の 役割 は 相 互 的mutualか つ 互 恵 的 reciprocal である。Stern は 「解離 の対⼈ 関係 化 」 の ⽴場 から分 析 的 ペ ア を 研究 し、投影同⼀化を 「解離 のエ ナク ト メ ント 」 の⼀ 形態 として 捉 え 直 して いる。それは 「 ⾃⾝の 解離 した部分を他者に 帰 属 させ、その他者を⾃⾝の 異 質 な 解離 した部分として扱う 」 ものと 表 現できるであろう(Stern, 20 11)。 P hilip B rom b erg の 研究 ( B rom b erg, 199 8 , 200 6, 20 11)は投影と 取 り⼊れの 複合 的な フ ィー ル ド としての分 析 状況 に 焦点 を 当 てて お り、そこでは 患 者の 解 離 した⾃⼰ - 体験が 処 理され、 患 者がそれを 取 り 戻 すことができる。 患 者の中の 解離 した⾃⼰ - 状 態 が分 析 家 の中の 関 連した⾃⼰ - 状 態 を無意識のコミュニケー ションの中で 誘 発 し、それが 参 加者によって 解 読 されるプロ セ スを彼は 説 明 し

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