IPA 地域間精神分析百科事典

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は、あまりにも強い攻撃性や羨望の気質が赤ん坊にあるとき、あるいは欲求不満を引き起 こす体験における不安や恐怖に対するその子の耐性が低いときに、たとえ母親に通常のコ ンテイナー機能があっても成長を十分に促進できないことがある。母親が返す応答や行動 は赤ん坊が不安や恐怖を和らげるのに十分ではなく、赤ん坊が母親のコンテイニング機能 を取り入れて同一化し、それを自分自身の一部とすることが困難となる。反対に、たとえ 赤ん坊の気質が正常であっても母親のコンテイニング機能が不十分であるときには、赤ん 坊から投影されている不安体験を母親が十分に理解し把握することはできない。そのよう な状況では、母親が赤ん坊に戻すものはまとまりがなく、意味は混乱しており、それゆえ 赤ん坊はその子自身の意味ある体験としてそれを受け取ることができない。 このように、成長を促す+ K と並行して、 ♂ 記号であるコンテインドと ♀ 記号であるコ ンテイナーの間の共生的あるいは寄生的関係を示唆する − K が存在する。こうした関係は 情緒状況に対処するまた別の方法であり、思考やその結果成生じる成長とは対立するであ ろう。すなわち、相互破壊に至るかもしれない関係である。 コンテインメントという概念を社会システムに適用する際に Bion が述べたのは、集団 (もしくは固定化された社会秩序、体制)と神秘家 ― 新しいが潜在的には状況を不安定に させるアイディアを集団へともたらす個人 ― の間の葛藤であった。新しいアイディアを象 徴する個人は集団の中にコンテインされる必要があるが、これによりその新しいアイディ アは集団によって押しつぶされるか、あるいは集団がその圧力のもとに崩壊するかのいず れかが起こりうる。 − K の出現とともに羨望と恐怖感の存在が認められるが、これらは断固として協力し、 心的生活の Bion モデルには欠かせない思考や必須である創造性を発達させないようにす る。 − ( ♀♂ )( マイナスコンテイナー - コンテインド ) の布置がもたらすのは、道徳性の膨張と 「超 - 超自我 super-superego ― なかったことにして学びを消し去ることの道徳的な優位性 や、あらゆることについて欠点を見つけることの利点を主張する ― 」 (Sandler, 2009, pp. 262-263) なるものの出現である。 この文脈で、次のことに注目するのは興味深い。すなわち、 1970 年の著書『注意と解 釈』において Bion は修正したコンテイナー - コンテインドに言及し、初め破局的変化 ― そ こでは、双方の要素がともに広がっていく ― として提示した。 1970 年に発表された『注意と解釈:精神分析と集団における洞察への科学的アプロー チ』においてビオンが自身の理論体系をまとめ上げてさらに展開したとき、「コンテイン メント」への寄与はささやかに見えたものの、それは革新的に精神分析を新しく組織する 重要な概念となった。それによって分析家とセラピストは「両陣営から」、乳児 - 母親間の 情緒的で前言語的なコミュニケーションについて、共通語で話すことが可能となった。 L

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