IPA 地域間精神分析百科事典

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はなく 間 between で進む精神相互の現象と過程に焦点を当ててきたように思われる。しか しこのような焦点付けの中においても、前主観レベルでの交流、患者と分析家との絡み合っ た主観性、両者の関係、両者の間の心的なフィールドと交流の多様な経路-無意識の反応、 感情や情緒、言語、身体的特徴、行動など-というように、優先される主題が大変異なって いるのを認めることができる。逆転移は次第に治療の道具とみなされつつあるが、その可能 性と落とし穴は、臨床的にも理論的にも分析家の大きな関心を引き続けている。 概念の発展を通じて現れた異なる意味を帯びた側面は、他のどのような概念に言及して いるか、どのような概念的領域から現れたかによって以下のように整理することができる: 心の局所論モデル(意識 / 無意識)に関係する「逆転移」、心の構造論モデル(自我‐理想 / 自 我、自我、イド)に関係する「逆転移」、特別な心的作用(抵抗、投影、投影性同一視、コ ンテイナー/コンテインド)に関係する「逆転移」、分析過程の特定の側面(効果的な機能、 情緒的な応答、共感)に関係する「逆転移」、分析家の心の特徴 / 限界に関係する「逆転移」 精神相互および / あるいは主体‐相互の交流という転移-逆転移マトリックス、あるいは場 に関係する「逆転移」 、である。 逆転移は、異なる伝統が、それを通して互いに接近することのできるようなトピックなの かもしれない。そしてそれは精神分析の共通基盤を作っているのである。古典的なフロイト 派の背景を持つ著者たちは、不可避的に分析家は患者によって影響を受けると考えるよう になりつつある。対象関係論の伝統の中で仕事をする分析家たちは、逆転移を、患者の投影 および / あるいは置き換えの結果(患者の無意識過程のみを映すような)というだけでなく、 分析家の性向を反映しているとみなしはじめてもいる。 今日では精神分析の文化、理論や臨床の多様性の隔たりを超えて、分析家か患者かを問わ ず分析家の感情は影響されるということについて幅広い意見の一致が定着し始めており、 このことは作業に取り掛かっている分析家の豊かで多面的、本質的で人間的な側面を立証 している。

以下も参照のこと:

コンテインメント:コンテイナー‐コンテインド

投影同一化(近日掲載予定)

エナクトメント

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