IPA 地域間精神分析百科事典

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において分析家の部屋は⺟親の⾝体という意味をもつと⽰唆している。Lemma (2014)は Blegerの考えに従って、とりわけ共⽣的な転移を起こす患者において「具現化された embodied設定」の概念化を発展させてきた。彼⼥は分析家の⾝体的特徴が患者の内的世界 に強⼒な刺激となり、分析家の⾝体におけるどのような変化であれ、おおいに患者を不安 定化させるものと感じられるであろうことを指摘した。 「契約」の他の要素、料⾦や休暇期間のようなことも外的設定の⼀部に含まれるべきだ ろう。料⾦についていえば、そしてとりわけ今⽇では、患者は経済的援助を組織などから 受ける必要があるかもしれない。それにより第三者機関の存在が必然的に含まれることに なり、これは最初の契約において考慮されるべき要素である。その第三者機関はそれぞれ の国により異なる。それは国⺠健康サービスであったり、健康保険であったり、候補⽣の 場合、精神分析インスティテュートのクリニックであったりするだろう。

Ⅲ. 内的設定

分析家の内的設定 に関しては、主たるアイディアは Freud に⾒いだされる。内的設定を 構成するのは「⾃⾝の注⽬を特定の何かに向けることのない」⼼の状態、そして「聞こえて くるすべてに向き合って…平等に漂う注意」を変わらず維持する⼼の状態である…「あらゆ るものに等しく注⽬するという規則は、患者に対してなされる要求―⾃⾝に浮かぶあらゆ るものを伝達すべきであるという要求―と、必然的に対をなす」。さらに、分析家は「注意 を向ける能⼒に対して、あらゆる意識的な影響が及ばないようにし、そして⾃⾝の『無意識 的記憶』に完全に⾝を委ねるべきである…彼はただ聞くべきであり、何であれ覚えているか どうかに気を揉むべきではない」(Freud, 1912, pp. 111-112)。こうした考えは今なお妥当で あるが、とりわけ Bion の もの想い reverie という考えによって、はるかに深められてきた。 Bionは もの想い を、「愛する対象からのいかなる『物/対象 objects』をも受容することに対 して開かれている、従って、乳児の[患者の]投影同⼀化を―それらが乳児[患者]には良 いものと感じられようと悪いものと感じられようと―受容することができる」⼼の状態と して定義する (Bion, 1962, p.36)。 内的設定を構成するその他の重要な要素は、中⽴性と禁欲である。Laplanche と Pontalis は 中⽴性 を次のように定義する。「宗教的、倫理的、社会的価値に関して中⽴であり…転移 の出現に関しても中⽴であり」「患者の話の特定の部分に、アプリオリに特別に⽿を貸した り、⾃⾝の理論的な前概念によってそれに特定の意味を読みとったりしてはならない」ので 中⽴であるよう努めるという分析家における姿勢である、と (Laplanche and Pontalis, 1973 p.271)。Anna Freudは、分析家が患者の⾃我、超⾃我、イドから等距離を保つ必要がある

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