内容の⽬次に戻る
Ⅱ . 概念 の 歴史 と 進展
Ⅱ . A. Freud と「 狭 義」の 逆転移 この用語は 1911 年 の Freud から Carl Gustav Jung への、 Jung の Sabina Spielrein と の 恋 愛 経験 を 扱 った手 紙 の中で 初 めて現れた。「 痛 みを 伴 うものではありますが、そのよう な 経験 は 必 要で 避 けることは 難 しいのです。それらの 経験 なしに、 私 たちは人生や 私 たちが 扱 い つつ ある 事 柄 を本 当 には 知 ることができま せ ん ・・・ それらは 私 たちに 必 要な 神 経 のず ぶ とさを 発達 さ せ 、 「 逆転移 」 を 抑 えるよう助けます。なにしろ 逆転移 は 私 たちにとって 恒 久 的な 問 題 なのですから。それらは 私 たちに 私 たち自身の感情を 最良 の強みに 置 き 換 える ことを教えます。それらは「 姿 を 変 えた 祝 福 」なのです。」( Freud, 1909, p. 230-231 ) この 概念 は、 1910 年 に 『精神 分 析 療 法の 今 後の 可 能 性 』 の中で 初 めて 正 式 に 公 表された。 そのなかで、 Freud は分 析 家に つ いて「 私 たちは分 析 家の 無 意 識 的な感 覚 への 患 者 の 影響 の 結 果 として分 析 家に生じる「 逆転移 」に 気づ くようになってきた。 加 えて 私 たちは、分 析 家 は 彼 自身の中にこの 逆転移 を認 識 し 克 服 するだろうと 主張 したい 気 持 ちになってもよいだ ろう ・・・ 自分自身の 葛藤 と 内 的な 抵抗 の 許 しを 超 えて 進 める分 析 家などいない」と 述べ た ( 1910. p. 144-145 )。この 叙 述 の中で Freud が用いた ド イ ツ 語の「 Gegenübertragung 」 が、 López-Ballesteros(1923) によりまず 最初 に ス ペ イン語で「 transferencia reciproca 」と、 あるいは 英 語では「 reciprocal transference 」、と 訳 されたことは 注 目 に 値 する。 2 年 後に 『 分 析 医 に対する分 析 治療 上の 注 意 』 の中で Freud ( 1912 )は、 患 者 との分 析 的 な 作 業 への 準備 として、そのような 逆転移 を認 識 し、 取 り 組 み、 克 服 するための 訓 練 分 析 を 主張 した。 さらに後に、 彼 は「 私 たちは、 逆転移 を 抑制 し 続 けることを通じて 我 が物にした 患 者 に対 する中 立 性をあきらめる べ きではない」と 付 け 加 えた( Freud 1915, p. 164 )。 Freud は分 析 家の 心 を「 道 具 instrument 」と 考 えたが、その 道 具 は 逆転移 や分 析 家の 未 解決 の 葛藤 と 盲 点 によって分 析 の 作 業 に 課 される 制 限 により上 首尾 のうちに 作 動することを 妨 げ られる。 したがって 逆転移 は分 析 家の自 由 と 患 者 を 理解 する 能 力への 障害 だとみなされた。まず 逆 転移 は 気づ かれ、その後 克 服 されなけれ ば ならない。 しかし 至 る 所 で、 矛盾 あるいは 葛藤 の 不 可 解 でかすかな 兆候 の中で、 概念 の 多様 性 ( Reisner, 2001 )を 予 見し形 作 る 彼 の自身の 理論 をく つ がえす 努 力に一 致 して、たくさん の手 紙 や 理論 的な見 解 の 再 評価 において Freud は 彼 の 弟 子たちが自 己 認 識 と自 己 理解 の一 部に 耐 えることを 学びつつ あることにもまた 気づ いていた。 逆転移 に つ いての 私 たちの 知 識 の深 化 はこの 原則 に ぴ ったりと 調 和 している。この文 脈 において、 精神 分 析 の 始 まりを 告
34
Made with FlippingBook - PDF hosting