IPA 地域間精神分析百科事典

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精神相互 的 interpsychic な 伝 達 に 臨床 的に 焦 点 を 当 てることととりわけ関係があるかもし れない。 成 人での 臨床 研究 にあてはめると、 多 くの 著者 ( Nahum 2013 )は 精神 分 析 プロ セ ス の 暗 黙 のルール の 共同 創 造 に つ いて強 調 している。しかしながら、 彼 らは 患 者 と分 析 家と の出 会 いを 促 進 し強 調 する一方で、 転移 と 逆転移 概念 を 軽 視 している。 多 くの現代的な 学 派では、「 逆転移 」 概念 の 明 白 な使用や 直 接話 題 にあ げ ることは 最 近、 少 なくなっているかもしれないけれども、分 析 家のパー ソ ナ ルな 面 での 寄与 から フ ォ ーカ ス が 外 れたわけではなく、 む しろその 反 対である。 患 者 と分 析 家の 絡 み合い inter-twining of patient and analyst は 今 日の 精神 分 析 の 主 要な 視点 の ひ と つ である。もし、 歴史 的な流 れをより長く 検証 するなら、 逆転移 が 精神 分 析 的方法の 重 要な要 素 をも つ ようになってい ることは 疑 いがない。 さらに 成 長と 知識 の 可 能 性を広 げ るものとしての 逆転移 に つ いて 付 け 加 えると、 Gabbard(1995) は 逆転移 が 異 なる 学 派間の 新 たな共通 点 になっていると 主張 している。 彼 は、 このことを 投 影 同一 化 や 逆転移 のエ ナ ク トメント といった 二つ の 鍵 概念 の 発展 によると 考 えている( 投 影 同一 化 やエ ナ ク トメントのそれ ぞ れの 項目 を 参 照 のこと)。 患 者 の 内 的世 界 に接近し、 影響 を 及 ぼ す 道 具 としての分 析 家の情緒的 反 応 に つ いての長く 発展 してきた 歴 史 をたどってみると、 最 近の議 論 は、分 析 状況における 逆転移 の 積極 的で 明確 な使用を拡 張 する べ きなのか、そしてもしそうするのだとしたらどのように拡 張 するか、といった 問 いを 含 んでいる。 つ まり、ある状況のもとで、 患 者 自身の体 験 の 理解 を 促 進 さ せ るために 逆転移 を 開示 す べ きかどうかといったものである( Renick 1999,Gediman 2011,Greenberg 2015 )。 しかしながら、この 介 入 技 法の 有 用性に つ いて差し 当 たり一 致 した見 解 はない。

Ⅳ . 結 論

卓 越 した 逆転移 の 夢 である 1895 年 の Freud の「イル マ の 注 射 の 夢 」から 始 まり、 逆転移 概念 の 発展 は「 精神 分 析 の 誕 生」からその 更 なる 発展 を通じ、 理論 と実 践 、 臨床 での 作 業 と 概念化 の 不 断 の 相互作 用の 良 い 例 となっている。 初 期 には 逆転移 は、 主 に分 析 家の 臨床 的な 有 効 性へのリ スク とみなされたが、 初 期 には ほ のめかされるだけだった 精神 相互 inter psychic の 過 程の結 果 として 逆転移 を 理解 する「そ の 他 」の 傾 向 は、 1920 年 代と 1930 年 代の分 析 の議 論 の中で 次 第 によりはっきりするよう になり、 逆転移 の定義は 徐 々に広がった。 20 世 紀 の 最 後の 10 年 と 21 世 紀 の 初頭 は、分 析 状況の 二 人の 主 役 の 精神 の 内 in だけで はなく 間 between で 進 む 精神相互 の現象と 過 程に 焦 点 を 当 ててきたように 思 われる。しか

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