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よって広く認 知 され、 注 意深く 観察 され、 海外 でもっとも 有 名な日本の文 化 人 類学者 である 中 根 千枝 によって 明確 に 述べ られているように( 1970 )、 ほ とんどの日本人の関係の 縦 構造 の性 質 は、 偏 在 している。それに関連し、か つ 絡 み合って、上 記 に引用した 特徴 は、 堅固 な 政治 と 社会 経済 階 級の 階 層 化 のあった 4 世 紀 にわたる 封建制 度の文 化 的およ び心理 的 影響 である。 西洋 の 影響 を受けた近代 化 は 19 世 紀 後 期 に 始 まり、 第 二次 世 界 大 戦 後の 新 しい 民 主 的な 統治 の 諸制 度の 確 立 と 政治 、 経済 、 科 学 技術 の 進 歩 による大 衆 生 活 における 多 くの 社 会 の 変 化 によって 加 速 した。しかしながら、 精神 的 底 流として、現代日本人の生 活 における 伝統 的文 化 の 価 値 や 特徴 は、 持 続 している。 Reischauer(1977) は、日本人の 変 化 への 適応 能 力に つ いて 書 き 記 し、 東 洋 と 西洋 の間の 多 くの人間的共通性を認めている。 Dean C. Barnlund (1975) は、 社会 において 標準 的であると言われている文 化 的 価 値 の 核 の 持 つ 凝 集 性に つ いてアメリカと日本を 比較 文 化 的に分 析 し、甘えを「文 化 的 無 意 識 」の代表として 述 べ ている。 この 観点 から 甘え の 理解 において 重 要なことは、 継 続 的な身体的親密さ、寛容さ、 応 答 性、 非 常に 没頭 的な母親の世話、子 供 の 周囲 に 他 の世話する人がいるような状況における 子 育 ての実 践 である。 島 国 の生 活 は 空 間が限られているため、 他 人と近接していること や、 並 んで生きる 必 要があることが、日本の生 活 状況である。拡大家族だけでなく、 隣 人 や 住 んでいるコ ミュニ ティ に、 非 常に 早 期 から子 供 は 触 れることになる。近 所 の大人は、 おじさん 、 お ば さん 、 年 長の子どもたちは、 お 姉 さん 、 お 兄 さん と 呼 ば れる。 彼 らは、子 どもの生 活 における 潜 在 的な世話人であり、グループに 所属 するうえでの 安 全感を 促 進 す る。 Alan Roland (1991) は、日本人の 精神 に 顕 著 な「家族の自 己 」という 概念 と 西洋 人の 「個々の自 己 」とを強く対 比 している。「家族の自 己 」とは、家族やグループの 微妙 な情 緒的 階 層 関係に 根 差している。 Reischauer (1977) は、日本人は、家族というよりも む し ろ、 周囲 のグループに結 び 付 いていると 述べ ている。このことは、 早 期 からグループの中 に自分の 場 所 を見 つ け、それを 内在化 するという意味での「グループの自 己 」というもの を 示 唆 しているのかもしれない。 この力動の 説明 の実 例 として、 七五 三という日本の 伝統 的なしきたりによる 祝 いが 挙げ られる。 2 歳 から 3 歳 、 4 歳 から 5 歳 、 6 歳 から 7 歳 の子 供 たちは、 伝統 的な衣 装 を着 て、地域にある地元 神社 に連れていかれる。 彼 らは、子ども時代を通 過 する 集 団 の 祝 典 で、プ レゼ ントとしてお 菓 子やおもち ゃ をもらう。
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