IPA 地域間精神分析百科事典

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禁、再⽣、エディプス的ライバルなどのドラマ)。

Sandler(1976)は⼆者の間の相互的な誘発および患者の無意識的な刺激に対する分析家 による⾃発的な反応に注意を払い、 役割応答性 role-responsiveness と呼んだ。 次第に エナクトメント enactment という考えは広く⽤いられ、精神分析の⽂脈でよく話 題 に 上 り 議 論 さ れ る よ う に な っ た ( McLaughkin,1991;Chused,1991;Roughton, 1993;McLaughkin & Johan, 1992;Ellman & Moskovitz,1998;Panel,1999)。 acting out はドイ ツ語の Agieren に相当する英語であることを思い起こさなければならないのだが、ある⼈ たちにとっては、 エナクトメント は単に⾏動化( アクティングアウト ) acting out を⾔い換 えたものであった。ドイツ語の「 er agiere es 」は「(he) acts it out」のオリジナルである。 (「・・・患者は忘却し抑圧していたものを 想起する remember のではなく⾏動化するので ある。」Freud,1914.p.149) いくつかの精神分析⽂化においては、 ⾏動化 の⽤語は期待される⾃由連想を打ち破る偶 発的で衝動的な⾏動について⽤いられるようになり始め、 Agieren の概念を制限するように なっていた。同時に、その⽤語は衝動的で精神病質なパーソナリティに基づいた⾏動を名付 けるために⽤いられるようになっていた。 ⾏動化 という⾔葉に含まれる道徳的な意味合い はメンタルヘルスや法律の専⾨家たちの⾔語を汚染してしまった。 ⾏動化 の エナクトメン ト への置き換えは、概念的な混乱や⽤語の軽蔑的な側⾯を取り除くことを⽬的としていた。 エナクトメント という⽤語は法律、命令、判決などの法的な意味合いを持つ。つまり、従 わなければならない命令という意味であり、そのことは考慮されなければならない。精神分 析的な概念は両⽅の意味を組み⼊れた。定義上、 ⼆者の両⽅ が エナクトメント に参加し、起 きていることに⼗分に気付いていないという事実もまた存在していた。分析家はその関係 に振り回され、⾃分⾃⾝の内的な問題や盲点にさらされる。対照的に、 ⾏動化 においては、 患者の発散は分析家によって気付かれているが、それは分析家は患者の発散に⾃分が巻き 込まれることを許容していないからである。 多くの分析家は我々が エナクトメント と呼ぶものと類似の状況をそう呼ばずに描写して きた。その概念はFreudと関連し、反復、再び⽣きること re-living、外在化、⾏動化など の⽤語で様々な理論を背景にもつ精神分析家によって洗練された類似の現象を集めること を可能にした。その⽤語は次第に精神分析の共通基盤の⼀部となった。Paz(2007)、Ivey (2008)、Mann&Cunningham(2009)、Spaisochin(2013)、Bohleber ら(2013)、Katz(2014) に最近の議論や研究が⾒ることができる。

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