IPA 地域間精神分析百科事典

内容の⽬次に戻る

G rillo,200 4; Sapisochin,200 7 ,2013 ;G us,200 7; Paz,200 7; Borenszte j n,2009 ; Rocha,2009 ; Schrec k,2011)

Ⅳ. アメリカとヨーロッパにおける現代のエ ナ ク トメントの 展開 と使用 Ⅳ. A . 中南米 : 展開 と 臨床 との関連

論 文に 記述 されているが、 エ ナ ク トメント のような 臨床 的状況はたいてい分 析 家に分 析 的な 機 能 を 失 ったと感じさ せ る 何 らかの行動か 突 発 的な振舞いの存 在 を 示 す。 例 え ば 分 析 家は 彼 が 皮 肉 っ ぽ く、 攻撃 的に、あるいは 誘惑 的に振舞ったと 気 付 き 驚 くかもしれない。あ るいは分 析 家は 彼 が 無 関 心 であることに、 予 定に時間の 前 に セ ッ シ ョ ンを 終 えたことに、あ るいは 延 長したことに 気 付 くかもしれない。分 析 家は 患 者 の 興 味深い語りに 過 剰 に 魅 惑 さ れるようになっていたことに、あるいは 患 者 と議 論 していたことに 気 付 くかもしれない。こ れらの 事 例 では、分 析 家は自身の分 析 的な 能 力が 損 なわれていたことに 気 付 き、それゆえに 困 惑 と 罪 の意 識 を感じる。後になって、分 析 家は 患 者 により 投 影 された 側 面 に同一 化 してい たと 気 付 くのかもしれない。 厳 密に言え ば 、これらの現象は 急 性エ ナ ク トメント ( Cassorla,2001 )と 呼 ぶ べ きだ。時には分 析 家の振舞いは 患 者 の振舞いよりもはっきりし ている。 逆転移 性のエ ナ ク トメント という用語は通常分 析 家の振舞いを表すために用いら れる。 Cassorla(2005, 2008, 2012, 2013) は境 界 例 に つ いて 研究 し、 急 性エ ナ ク トメント が生 じる 前 に、分 析 的な 二者 dyad は 患 者 と分 析 家が 互 いに 区別 を 失 ってしまうような 遷延 性の 共 謀 をすでに長きにわたり 作 り上 げ てしまっていることを 明 らかにした。そのような共生 的な 二 人 組 は 芝 居 の 演 技 か物ま ね に 似 た振舞い (Sapisochin,2013 )を見 せ る。そしてこのよ うな振舞いは 慢 性エ ナ ク トメント と 呼 ば れる。 二 人 組 のどちらも 何 が 起 こっているのかを 分かっておらず、ようやく 気 付 くのは、 急 性エ ナ ク トメントが 発 生しそのことを認 識 した 少 し後だ。 慢性 エナクトメント( 気付 いていない) ⇒ 急性 エナクトメント( 気付 いている) ⇒ すでに ⽣ じ ていた 慢性 エナクトメントを 認 識、とい うシ ークエン ス の 研究 は、象徴化の 過 程 が 障害 されている 領 域で作 業 する 時 の分析 過 程 のある 種 の ⾃ 然 経過 の 記 述 を 提供 する。 臨床 での 事実 は、 外傷 として 経 験 される三者関 係 の現 実 を 知 覚 しないよ う にする 防衛組織 を 明 らか にする。 臨床 での 経 験 は 以下 の シ ークエン ス を ⽰ す。 第 1相 . 分析家は接 近 することが 難 しく、分析 過 程 を 攻撃 し 破 壊 する患者を 扱 っているこ とを 知 る。しかし、その 困難 は 忍耐 と 根 気 強さがあれば理解されるのは 確 か だ 。 モ ーメントM : 所 定の 局⾯ で、分析家は、たいていは 衝 動的に、 介 ⼊ したり⾏ 為 をしてい る 彼⾃⾝ に 驚 く。そして 困惑 し、 罪 の意識を 感じ 、分析的な 能⼒ を 失 ったとい う 印 象を 持つ 。 分析家は患者を 何 かしら 傷つ けたのではないかと ⼼ 配 し 困難 な状況が 差 し 迫 っていると 想

73

Made with FlippingBook - PDF hosting