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との観点から中⽴性を定義した (1936)。LaplancheとPontalisは 禁欲 を次のように定義し ている。分析家は「患者の要求を満⾜させたり、患者がえてして分析家に強いる役割を果た したりすることを、原則として拒否すべきである」(1973, p.2)。 Freud は、1911 年から 1915 年にかけて執筆した技法に関する諸論⽂の中で、治療への熱 意が孕む危険について論じ、分析家は外科医のように振る舞うという有名な描写を⾏った。 後者の⽐喩は、⽂字通りに受け取られるならば、(沈黙する分析家という考えにおけるよう に)誤解や批判を免れなかった。分析家は「正しい」解釈を与える必要があるだけでなく、 重要なことだが、分析のプロセスが進展していくような関係を患者に提供する必要もある という事実を、Rycroft (1985)は強調した。Aron (2001)が強調するのは、分析における相互 交流は⾮対称的だということである。⾮対称性の⼀つは、双⽅の参与者ともに設定/枠組み を維持しようとする試みに失敗するであろうものの、分析することによって枠組みを回復 するのは分析家の責任である、ということである。これは倫理的な問題でもあり、そしてメ タ⼼理学的な問題でもあるようで、分析家の義務と機能に関係する。中⽴性と禁欲もまた、 ⾃⾝の患者や仕事に対する分析家の姿勢という倫理的な次元の基本である。これらの能⼒ を真に内在化するのでなければ、分析家の⾃⼰愛的なニードが患者の脆弱性を搾取するこ とになるかもしれない。倫理違反の研究 (Gabbard と Celenza, 2003)によって、分析的禁欲 の重要性と意味、そして分析家が⾃⾝の逆転移をモニターすることの継続的な必要性に注 意が向けられた。 通常 内的設定 は分析家に⾔及しているのだが、しかし、 患者 については内的設定が検討さ れないとする理由もまた存在しない。分析状況の特異性は、無意識的な情動、葛藤、空想を ⾃由に表現することを患者が厭わず、そして分析家にそれを把握する応答性があることに 存する。患者が⾃⾝の無意識的空想を表現できるためには彼はある特定の精神状態を必要 とするのだが、⾃由連想に応じようと努めるという約束を受け⼊れるために、その精神状態 を達成することは容易ではない。フロイトによるとこの基本規則は、患者が「いかなる意識 的な内省をも控え、静かな集中状態で、おのずと(意図せず)⾃⾝に⽣じる考えを辿ること に―[…]たとえそれらの考えが不愉快で、あまりに⾺⿅げていて、あまりに取るに⾜らなか ったり無関係であったりするとしても―⾝を任せ」なければならない、ということから成っ ている (Freud, 1924, p. 195)。 Winnicott のホールディングや促進的環境という概念を継いで、ほかの多くの分析家が 「分析的態度」に関する思索を探索し発展させてきた (Winnicott, 1965, Klauber, 1981, Bollas, 1987, Parsons, 2014)のだが、それは、分析家が⾃⾝を患者によって使⽤される対象 として提供するような態度である。これにより、転移と逆転移や分析家の情動的応答 (King, 1978)を含めた分析過程の理解に関する領域が広がっていった。J. Sandler (1976)は分析家
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