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えない。分析のフィールドは、分析的カップルの無意識的空想として設定され、そういうも のとして分析全体を通して扱われることになる。
強い影響⼒を孕んだAndré Greenの論⽂「分析家、象徴化、そして分析設定における不 在」(1975)は、Green がその仕事をフランスに紹介した Winnicott との思い出に捧げられて いる。Green による Winnicott の解釈では、枠およびそれに伴う分析的な存在の性質は、移 ⾏空間での体験や創造的に考えることの患者の能⼒を促進したり阻害したりするという役 割において、現在における「環境」である。考えることとは、⾃分⾃⾝の⼀部として主体化 された、⾮-幻覚性、⾮-投影性の思考という意味でここでは⽤いられている。こうした理論 ⾯での開通を拡張するなかで、René Roussillonの仕事では「スクィグル」の性質が強調さ れてきた:「設定は、共有される遊びの領域/場へ、あるいはともに考えること co-thinking へ参加することを促す、患者への招待になりうる。そこでは患者が⾃分⾃⾝のやり⽅で『応 答する』ことが可能であり」(Roussillon, 1995)、そしてその結果、分析家に「抱えられる」 か解釈されるかのいずれかが⽣じるであろう。分析家と彼の設定は、対象の使⽤という意味 で「柔軟な媒体 médium malleable」になるのである (1988, 1997, 2013)。 Ⅵ. A. 北⽶に特有の貢献と発展 進⾏中の精神分析過程に能動的かつ⼒動的に関与するものとしての精神分析状況 psychoanalytic situation /設定 setting /枠組み frame を重視し、フロイト派の伝統を影響⼒ を持って拡張した⼀連の仕事は、Stone、Modell、Spruiell らの著作に⾒られる。もはや古典 となったが当時は⾰命的であった論⽂「精神分析状況」 (Stone, 1961) と、その続編「精神 分析状況と転移」 (Stone, 1967) のなかで、Stoneは設定が発⽣させる⼒動的な「⼒の場」 と有機的に関連したものとしての精神分析的設定の概念を提⽰した。このパースペクティ ブでは、設定は、⽐較的成熟した転移ばかりでなく蒼古的な転移の形で⼀連の錯覚を引き起 こし、異なる時間性の相互作⽤の場を提供する。 Robert Langs (1984) は構造的な提供としての理想的な古典的枠組み frame について記述 しているが、それは患者の無意識的なコミュニケーションが安全に現れる(そして分析家の 無意識的コミュニケーションと交わる)⼆者的 bi-personal 領域を定めるものである。彼の 「コミュニカティヴ」アプローチのなかでは、「枠組みを確⽴し、マネージし、修正し、そ の侵害を分析することが、⽐較的認識されていないが⼀貫して重要な介⼊の⼤部分を構成 する」 (Langs, 1979, p. 12) 。⼆者的 bi-personal で多⽅向性の領域における投影‐取り⼊ れの無意識的コミュニケーションの多⾯性―それはそこに出現しつつある⼒動的な特性、 および患者の転移への分析家の寄与を含む移⾏空間のなかで体験する能⼒とのつながりを 表している―は、「安全に確⽴され維持された枠組み」によってこそ出現し得るものなのだ が、それについての彼の内容豊かな論述は、認めるかどうかに関わらず、豊富な現代的な発
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