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Ⅲ. 相互的な国際的影響と概念の現代的使用
Ⅲ .A. 現代フロイト派と対象関係論 北米の現代自我心理学および葛藤理論の流れにおいて、 Arlow(1997) と Abend(1986) がセ ッション中の分析家の内的状態の細かな点やプロセスに焦点を当て、それに引き続き、 Lasky(2002) は共感と分析的道具および本来の逆転移とを区別している。 Blum(1991) は分 析プロセスの 双方向の転移‐逆転移領域における情動的なコミュニケーション の複雑さお よび精神内界の葛藤パラダイム( Ellman,Grand,Silvan&Ellman 1998 )の文脈から認知や 経験、コミュニケーションや情動調節に特に困難を抱える患者の分析における特有の問題 に焦点を当てた。 Kernberg(1983) は軽症の境界パーソナリティ患者の性格分析について記し、慢性的な逆 転移と急性の逆転移とを区別している。 Heimann(1960) の影響を認めながら、「・・・ 慢性 的な行き詰まり は 慢性的な逆転移的歪曲 (急性の逆転移の発展よりも目立ちはしないもの のより広範にわたっている)とそうでなければ診断されなかったであろう微妙であるが強 力な転移的アクティングアウトの両方を診断するのに非常に重要であるかもしれない。こ の点において、分析家の情緒的体験のすべてを考慮することは、ファーストラインのアプロ ーチである直接的な転移の探求が不十分であるときの「セカンドライン」のアプローチであ る。」と彼は記している。( 265 、 266 ページ、強調追加)全体的には、 Kernberg ( 1965 、 1975 )の逆転移に関する考えはとりわけ境界例患者との作業においてその重要性を増し続 けている。 1965 年に分析家に生じるあらゆる情緒的な反応を含むといった「逆転移」概念 を拡大させることへの危険について彼は警告する一方で、 1975 年には逆転移を解釈する建 設的な分析的ワークを認め、強調した。特に境界例患者とのワークにおいて、患者の非常に 原始的な対象関係の投影による強烈な内的反応 に分析家は対処し、管理しなければならな い。彼の最近の転移に焦点をあてた精神療法( Transference Focused Psychotherapy TFP ) において、境界例患者の転移反応に全体的には焦点付けしながらも分析家の逆転移を内的 にモニタリングするパラダイムを概説している。このモデルにおいて、分析家は 第 3 のポ ジション から対話中の両者の相互作用について解釈的にコメントする。( Kernberg 2015 ) 対象関係論と対人関係論の間の創造的な人物である Mitchell ( 1993,1997 )は、 逆転移感 情は心的ムーブメントのための原動力である という説得力のある理解を伝えている。彼の ヴィネットはどうしようもない絶望の瞬間にある分析的なペアをしばしば描写している。 絶望という経験なしには、行き詰まりに至るプロセスを理解するために必要な仕事に分析 家が駆り立てられることはないだろうと Mitchell は考えている。彼の仕事においては常に 二人が権威をもって語っている。
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